ベクトル解析 [1] – 3重積と弧長・表面積

 ベクトル解析の攻略にかかってから今日で 3 日目。とりあえず日記のようにして連日わかったことを書いていこうと思います。

スカラー 3 重積

 初日は、ベクトルの足し算引き算から戻って文字通り 1 から復習してきたのですが、足し算引き算や内積 (スカラー積) 、外積 (ベクトル積) などは高校でも習うような概念なのでここではあえて書きません。
 ベクトルの “積” は、内積、外積がありましたが、この二つの演算を組み合せることで、スカラー 3 重積というものを定義できます。

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定義は、このようになります。かっこがないのでいまいちわかりにくいかもしれませんが、これは括弧が無くても 1 通りの解釈しか存在しないため、外積にはかっこをつける必要がありません。なぜならば、外積はベクトルだからです。内積から計算しようとすると、スカラーとベクトルの外積をとることになりますが、外積の定義からそのようなことはできません。したがって、わざわざ外積にかっこをつけなくても、混乱するおそれはないのです。
 まず、上の行列式による定義ですが、このようになることを証明するのは非常に簡単です。まず、外積の定義より、

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なので (一つおかしい項があありますが、本来 c1 といれるつもりのところが 1 になってしまいました。脳内補完しておいてください。) 、あとは内積をとることで

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となります。ちょうど内積をとると、A の各要素で行列式を余因子展開したような形式になります。また、スカラー 3 重積の大事な性質として、次のようなものがあります。

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これを証明するのは非常に容易で、行列式による定義に戻れば、

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なので、

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が成立します。行列式は 1 回だけ入れ替えを行うと符号が反転しますが、上記の入れ替えは全て 2 回行われているため、符号が変わらないので等しくなります。いわゆる “メリーゴーラウンド” 式に、 A-B-C の順番を守っていれば、全部等しいということになります。もう一つ忘れてはならない性質として、ドットとクロスの順番は入れ替えても問題がないという点があります。すなわち、

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が成り立ちます。これは上記の性質を用いれば、ただちに導かれるものです。

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です。内積は交換法則が成り立つため、このようになっています。
 以上から、ドットとクロスの位置どちらでも変わりがないため、そのベクトルの順番だけが問題になっていることがわかります。そこで、スカラー 3 重積は記号二つすら書くのが面倒なのか、省略して [ABC] のように記述されることもよくあります。
 代数的な性質は以上ですが、図形的には、スカラー 3 重積は 3 ベクトルが作る平行 6 面体の体積を意味します。これは、内積、外積の定義に戻れば分かります。外積は 2 ベクトルが作る平行四辺形の面積を意味するのでした。なぜならば、外積の大きさは

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で定義されているからです。

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見事に、底辺 × 高さという形式になっていますね。外積 A×B は A, B に直交するベクトルを示すため、それも考慮して、スカラー 3 重積に話を戻すと、

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このようになるため、直感的にこの 3 ベクトルで作る平行六面体の体積っぽいのが見えると思います。また、A×B の方向が逆だったりした場合は、値は負になります。なので、体積というよりは定積分のような “符号付き体積” であることに注意しておかなければなりません。
 このことから、スカラー 3 重積が 0 となるような場合は、どのような場合かが見えてきます。スカラー 3 重積に平行六面体の体積という意味づけを行えばすなわち、スカラー 3 重積が 0 であるというのは、3 ベクトルで平行六面体が出来ないことをいっていますので、つまり、立体が潰れてしまっています。このような状況では、3 ベクトルは同一平面上にあるということがわかります (あるいは、同一直線上にある)。
 ここで、ちょっと待って欲しいのですが、スカラー 3 重積が 0、

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であるということですが、このとき “3 ベクトルは同一平面上にある” 言い換えれば、3 つのベクトルは一次従属であるということになります。逆に、

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であれば、3 つのベクトルは一次独立であるということがいえます。この行列式が 0 かそうでないかというのは、どこかで見たことがあります。それは、線形代数学で出てきた “一次独立・一次従属の判定法” に他なりません。ただ、線形代数学では主に列ベクトルを扱っているので、

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であるかどうかという形で出てきました。しかし、行列式には

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という性質があるため、転置を取れば本質的には同じ物であるということが分かります。

ベクトル 3 重積

 外積の外積、すなわち

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のことを、ベクトル 3 重積といいます。スカラー 3 重積は外積の内積なので文字通りスカラーでしたが、ベクトル 3 重積は外積の外積なのでベクトルです。外積の計算は大変めんどくさいので、外積の外積なんて来たらもうやる気がなくなってしまいそう。しかし、ベクトル 3 重積には次のような公式が存在するため、比較的簡単に計算できます。

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このことからわかるように、ベクトル 3 重積はかっこの付ける方によって示す物が変わってしまうため、一般に

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となることに注意しなければなりません。また、上の公式は覚えづらいかもしれませんが、どちらも “真ん中をぬいた内積かける真ん中のベクトル” から、”かっこのなかを入れ替えて、もう一度真ん中をぬいた内積かける真ん中のベクトル” という法則に従っているので、そのように覚えれば大して難しいことではありません。
 ベクトル 3 重積の公式の証明ですが、これは成分をていねいに計算することで証明できます。しかし、その方法では大量に項を扱うことになる上、”無い項を出現させてうまく変形に持って行く” という面倒な手法が必要になるため、やや美しくありません。そこで、次の方法で証明します。
 等式の証明と言ったら、高校の頃から 左辺 – 右辺 = 0 という手法をとればいいことは相場が決まっています。そこで、

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が、零ベクトルであることを証明します。いま、ベクトルのうち、A と C が等しいとします。すると、

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ですが、ベクトル 3 重積の方に目をやると、C×(B×C) になっています。B と C で作る平面に垂直なベクトル B×C と、C とに垂直なベクトルとの外積ということですから、結局このベクトル 3 重積は B-C 平面内にあることがわかります。垂直にしたあとさらに垂直にしたので向きはしりませんが同じ平面内に戻ってきたということですね。右にある項も全て B-C 平面内に属するため、結局このベクトル V は B-C 平面内のベクトルであることがわかりました。要するに V は B, C の一次結合で V=sB+tC のかたちで表されます。
 結局、V が 0 であることを確かめたいのですから、まずこの場合は、V に直交しないベクトルとの内積が 0 であることを示します。直交せずかつ 0 でないベクトルとの内積が 0 であれば、V 自体の大きさが 0 であるといえることになるからです。いま、V は BC 平面上にあることがわかったので、明らかに直交しない B と C との内積をそれぞれとって試します。両方確かめなければならない理由は、片方だけ試しても、たとえば B, C は直交していて V が実は C と平行である場合なども考えられるからです。ここで、大体方針が見えてきたかもしれませんね。まず、 B-C 平面内の任意のベクトルについて V=0 が正しいことを証明したのち、B-C 平面に垂直な任意のベクトルについても V=0 が正しいことを示すのです。この二つが証明できれば、結局、任意のベクトルについて V=0 が成立したといえます。
 とりあえず、内積を取ります。

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ですが、ドットとクロスの位置は入れ替えても問題ないため、

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となります。ですが、これは 0 になることがわかります。なぜなら、定義に従って外積の大きさを変換すれば

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となるからです。ちなみにこの第一式右辺 = 0 になることについては名前がついており、Lagrange の恒等式 (ラグランジュの恒等式) というそうです。
 続いて、C との内積を取りますが、こちらは簡単です。

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したがって、以上から、一次独立な 2 つのベクトルで表現される、BC 平面上の任意のベクトル V は、明らかに直交しない 2 つのベクトルとの内積が 0 になったため、A=C のとき V=0 であることが示せました。
 もう一つ、C×(B×C) のほかに、B×(B×C) も示しておきます。あとでそれらを加え合わせれば、(BとCの一次結合)×(B×C) ということになり、これで正真正銘任意の B-C 平面上のベクトルにおいて、ベクトル 3 重積の公式が成立することが示せるからです。これは先ほどの結果を流用すればいいですね。A=B としますが、うまく B×(C×B) の並びにすればすでに正しいことが示された C×(B×C) の C を B に、B を C に置き換えれば済むのです。

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このようになります。以上の二つの等式を任意のスカラー倍します。

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これらを足し合わせると、証明したかったことが実現できます。

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これで、A0 (B-C 平面内の任意のベクトル) において、公式が成立することがわかりました。あとは、垂直である場合さえ調べればよいですね。
 次に、A が B-C 平面に垂直であるとします。すると、B×C は B-C 平面に垂直なのですなわち、A と平行ということになります。したがって、3 重積は消滅します。右の項も、B-C 平面と直交するということは、A と B, C それぞれの内積は 0 であるということなので、やはり全部消滅して V=0 であることがわかります。このため、B-C 平面に垂直な任意のベクトルにおいて、このベクトル 3 重積の公式が成り立つことが示されました。
 垂直の場合の任意のベクトルを A1 とすれば、

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の二つが成り立っていますので、二つの式をたしあわせれば

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であることがわかります。任意の B-C 平面の成分と任意の B-C 平面垂直成分の和について上記が成り立つことがわかったので、これはすなわち任意のベクトルについて

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が成り立つことが示されました。言い換えれば、一次独立な 3 ベクトルの任意の組み合わせで表現されるベクトルについて上の公式が成り立ったので、それはどんなベクトルでもこの式が成り立つということだろう、ということですね。もう片方の公式は、クロスの左右を入れ替えて文字を置き直すだけで容易に証明できるので省略します。

ベクトル関数の微分

 2 日目はいよいよベクトル関数の微分に入ります。ベクトル関数とは、一般に x 座標、y 座標、z 座標、全て何らかのスカラー関数で表されるような関数をいいます。そういう意味では、今までやってきた関数も、ベクトル関数として表示できます。たとえば、(x, f(x)) というような 1 変数関数だって、x の値によってその点を向くベクトルが動いていくのだと考えればこれをベクトル関数として見ることもできるし、関数のグラフはベクトルの軌跡だと言い換えることもできます。一般にベクトル関数は、次のようにあらわされます。

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要するに変数 t によって各座標がばらばらにうごいて行った結果、何らかの軌跡を示すことになる、ということですね。1 変数関数によるベクトル関数は曲線を示します。1 つの t に対して 1 つの f1, f2, f3 の組しか定まらないですから、f1 から f3 が連続関数であれば、結局 f(t) はなめらかに曲線を描いて動いていくというのが直感的に分かると思います。
 ベクトルを微分するとは、それぞれを t で微分する、つまり

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を意味します。これは、1 変数関数のときと同じく “接線ベクトル” を示します。各方向について接線の傾きを示しているのですから、それをあわせれば接線のベクトルになるのは直感的に見えると思います。ベクトル関数の微分には、スカラー関数の微分によく似た性質がたくさんあるため、実質覚えなければならない関数はあまり多くありません。まず、内積と外積の形の微分公式は、以下のようになります。

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積の微分公式と非常に似通っているので、あまり覚えるのは苦労しません。この公式を証明するには、やはり成分を逐一計算していけば求めることが可能ですが、できるだけ項などを作らない方針、ちょっと工夫したやり方で求めてみます。
 まず、内積の方ですが、内積自体を関数 f(t) としておくと、

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となりますが、これの微小変化量を求め、極限をとります、すなわち、{f(t+Δt)-f(t)}/Δt の Δt に関する 0 極限を取ります。

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丁寧に書くとこうなります。積の微分の証明とほぼ一緒な手順ですね。外積の方もこれのドットをクロスに置き換えるだけで成分は一切出さなくても証明できますので、こちらは省略します。また、偏微分も全く同じようにして定義されます。そこで成り立つ公式もこれと一緒なので、省略します。
 この公式の応用として、”大きさが一定のベクトル関数は、その導関数と直交する” ということを示すことが出来ます。大きさが一定のベクトルとは、定ベクトルもありますが、単位ベクトルなどもその仲間です。
 内積の微分公式より、

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しかし、大きさが一定なので、自分自身の内積は大きさの二乗ですから、

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曲線の長さ

 三日目は曲線の長さと面積についてです。上で述べた 1 媒介変数によるベクトル関数は一般に、曲線を示します。曲線の長さを求める方法については、微分積分学でも少々出てきた、1 変数関数の曲線の長さをとほぼ同じようにして求めることが出来ますが、こちらは媒介変数表示されているため、考えは全く同じでも出てくる式がやや異なります。
 微小区間における曲線の “弧” の長さを、微小なのでほぼまっすぐとみれば、三平方の定理より、微小な曲線の弧の長さ ds は、

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と表現されます。これを積分することで、曲線の長さが得られます。まだ進んでないので詳細は分かりませんが、この概念はこの先出てくる線積分と関係があるようです。t の意味が分かりづらければとりあえず時間という意味を与えておけば納得がいくと思います。f(t) は時間にしたがって何らかの曲線を描くので、曲線のある場所からある場所までの長さは、ベクトル関数が両場所を示す “時間” の間で積分すれば、長さが得られるが、その長さの倍率には |f'(t)| の開きがある、ということになります。
 ここで、曲線の長さ s は、時間による関数で表されるとみることもできます。つまり、

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というふうに表せることがわかります。紛らわしいですが、これは |f'(t)| の 0-t 定積分を求めたものという意味で、被積分関数の変数は t’ とでもしておくべきかもしれません。また、始点は 0 としてありますが、別に 0 秒からである必要はないので、スタート地点は任意の a としておいても問題ありません。また ds/dt は当然のことながらベクトルの大きさつまり常に正であるので、曲線の長さは単調増加関数です。したがって、逆関数を考えることができます。要するに、時間と長さは 1:1 対応しているので、ある時間のとき曲線の長さがただ 1 つに定まっているのならば、逆に “この長さの時、最初からどれだけの時間が経ったか?” という関数を考えることができます。
 わざわざよく分からないものを考えるな、といった感じですが、この関係を考えることである公式を得ることができます。最初に、逆関数を、具体的には示すことができませんがとりあえず

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という形で表示できたとします (t と s が 1:1 対応するので逆関数をこのように記述することは可能)。このように書くと、f(t) は f(q(s)) の関数であるとみることができますが、もっと進んでこれ自体 s の関数であるという見方も出来ます。しかしその場合、形は f(s) そのものではありません。たとえば、f(t)=t で、 t=q(s)=s/2 だとしたとき、f(q(s))=s/2 ですが、f(s)=s ではありません。要するに f 自体を s の関数とみようとすると本来の形とはまた異なったものになってしまうので (先ほどの例でいくなら f(s)=s/2 という形になっているので、これは f(s)=s ではないため、s の関数でおくならまた別のものとして関数をおきなおさなければならない)、これを g(s) とします。したがって、

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ということになります。これを s で微分すると、合成関数の微分より、

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となりますが、ここでみた dt/ds というのはどこかでみたような関係です。この逆数 ds/dt = |f'(t)| でしたからね。1 変数関数の微分については逆数の関係が成立するため、 dt/ds = 1/|f'(t)| とできます。したがって、

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となることがわかります。T は単位接線ベクトルと呼ばれるものです。この式はしばしば用いられるため、覚えるとまではいかなくても、押さえておく必要はあるのだと思います。

曲面の面積

 1 つの媒介変数で表されるベクトル関数は曲線を示しましたが、2 つの媒介変数で表されるベクトル関数は曲面を示します。一般に曲面を示す z=f(x, y) も、ベクトル関数 f(x, y) = [x, y, z(x, y)] と見れば・・・曲面を表すのもなんとなく分かると思います。一般には、

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というふうに表現されます。u を固定すれば v だけの 1 変数ベクトル関数なので 1 つの u について何らかの曲線を描きます。逆に、v を固定すれば u だけの 1 変数ベクトル関数として 1 つの v について何らかの曲線を描きます。これをイメージしていけば曲面になるのがだいたい見えてきますね。

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このような曲面の面積を求めるためには、微小区間における面積についての考察をしなければなりません。まず、微小面積を取り出すのですが、十分小さく取れば、曲面もほぼ平行四辺形のように見ることができます (曲がりを考慮しなくていいくらいに拡大する)。

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微小面積がただの平行四辺形に見えるくらいに拡大すれば、微小面積は

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となります。同時に、微小面積平面に直交しますので、この外積で出来たベクトルはすなわち、法線ベクトルとなることも意味しています。したがって、大きさ 1 にした単位法線ベクトル n を、

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という風に定義できます。以上から、曲面の面積は、

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で求まることが分かりました。ちなみに、半径 1 の球の表面積が 4π であるなどの公式も、この手法で出すことが出来ます。

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