ベクトル解析[5] – 体積分 / 平面のグリーンの定理

体積分

 線積分と面積分は今までの微分積分学にはなかった独特の計算方法だったため、慣れるのに一苦労でしたが、線ときて面ときたら体積分というのもやはりあります。しかし、概念的には体積分は一番簡単です。体積分 (Volume Integral) とは、

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で表される積分のことをいいます。見ての通り、φ がスカラー関数であるため、微小体積要素 dV = dxdydz であることを考慮すれば、これは体積分とは名前だけで、ただの 3 重積分であることがわかります。しかし、通常微分積分学の授業においては 2 重積分の計算までしか扱われない (自分のところはそうだった) ため、慣れるための例題を次に取り上げてみます。
 イメージとしては、φ を密度関数としてとらえればよいでしょう。φ は各点におけるその物質の密度を表しているのです。これを体積で積分することはつまり、物質の質量を計算していることにあたります。そのほか、熱でも似たようなケースなら何でも良さそうですね。ベクトルも出てこないので比較的これはイメージがつきやすいと思います。じゃあベクトルも出てこないのになぜベクトル解析で使うのか、というと、これに関連した定理が存在するからなんですね。それは Gauss の発散定理といわれるものですが、これについては後に回したいと思います。

体積分、すなわち 3 重積分はどうやって計算する?

 私は最初 3 重積分を計算したことがなかったのでやや、やり方に戸惑いましたが、2 重積分と似たようなパターンです。2 重積分のやり方を思い出してみましょう。

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このように、まず y (x でもいい) 方向に板を作り、次に x 方向に積分して体積を作るイメージなのでした。回転体の体積を計算するとき、切り口の面積を π{f(x)}^2 としてそれを積分していましたが、この “切り口の面積” にあたるものが y 方向に板を作る、最初の積分なんですね。切り口の面積を積分したらあとは残りの方向、 x 方向に積分で体積が分かる、というわけです。
 3 重積分はやり方が特に変わるわけでもなく、さらに手順が 1 つ増えるだけです。板を作る前に “棒” を作るんですね。

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ただこれだけです。図では z 軸から先にやっていますが、 y 軸からはじめても x からはじめてもそれは同じことですね。この場合だと、z は底と頂上にあたる平面の方程式を z= のかたちにして積分範囲にあてはめればいいだけ、y は xy 平面への射影を作って以下 2 重積分と同じ・・になりますので、基本的に “手間が 1 つ増えるだけ” です。しかしインテグラルが 3 本も重なるとある種の難しそうな記号を扱うことへのあこがれからわくわく感もありますが、同時に見た目がなんだか不気味でもあります。
 試しに、3 重積分を計算してみます。

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最も簡単な例の 1 つといえますね。積分範囲は図示しなくてもこの程度なら大体わかると思いますが、念のため書いておくと、

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ですね。この場合、どの順でやると楽だとかは別にないので、上に書いた手順に従って z 方向に棒を作り、y 方向へ棒を重ねて板を作り、最後に x 方向へ板を重ねて立体を作って、体積分を完成させます。この場合底面はいうまでもなく z=0 であり、上面は x+y+z=1 すなわち z=1-x-y ですから z の積分範囲はこれで決まりです。
 y の積分範囲以降は、V の xy 平面への射影で考えればいいのですね。これは 2 重積分で慣れっこのはずです。y の積分範囲は射影を考えれば分かるとおり、y=0 から・・xy 平面への射影ですから z=0 としたときの x+y=1 つまり y=1-x までということになります。
 最後、x 軸は 0 から 1 まであるので、x=0 から x=1 で積分すればよいですね。したがって、

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という累次積分に直すことができます。あとは、

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という風に、累次積分に直せます、と簡単に言ってしまったのですが、やってみたらすごい手間がかかるのがわかります。やっぱり 3 回も積分すると半端ないですね。

(平面の) グリーンの定理

 線積分、面積分、体積分の概念を得たら、次に積分定理を攻略します。積分定理としてまず出てくるのがこの平面のグリーンの定理です。実はグリーンの定理と呼ばれるものは複数存在するのですが、ここでは、この平面のグリーンの定理のことをグリーンの定理と呼ぶことにします。
 グリーンの定理とは以下のようなものです。条件として、xy 平面上において、各軸に平行な直線を引いても、xy 平面上の領域 R の境界線 C とは 2 回までしか交わることがないとき、

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が成立します。すなわち、領域 R とその境界線 C の条件とは、

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ということです。もちろん、中に穴が開いてたりするような図形も論外ということですね。実は、右の NG と書いた場合でも、もっとぐにゃぐにゃしていても、しかも中に穴がいくつ開いていても上のグリーンの定理は成立するのですが、そんな状態で証明しても何をやっていいか分からないので、何事も簡単な場合から、ということなんですね。
 私自身これが物理的、あるいは幾何学的にどのような定理なのかよく分からなかったので、調べてみたのですが、別にこの定理自体に何か凄い意義があったりするわけではないようです。どちらかというとより一般的な定理の証明に、補助的に用いられることが多いのですね。ちなみに、これを一般化した定理にはベクトル解析の肝ともいえるガウスの定理やストークスの定理があります。逆に言えば、これはガウスの定理とストークスの定理の特別な場合になっています。やはり、何事も簡単な場合からということなのでしょう。言い方は悪いですが、この定理は (物理のための数学としての) ベクトル解析ではさほど重要ではありませんので、別にやらなくてもいいかなと思います。ただし、証明のアイデアはガウスの発散定理などに活用できるため、確認しておくといいかもしれません。
 証明は比較的簡単です。答えありきのような証明方法ではありますが、まず、上の図の左のような例は、必ず接線が 4 本存在しますので、その点を A, B, C ,D とおきます。具体的に図示すると、

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ということです。線積分の方はなんだか分かりづらいので、とりあえず 2 重積分の方から線積分と一致することを確かめてみます。項が 2 つあると考えにくいですから、 2 つにばらして、

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から見てみます。
 この領域 R で積分を行うためには、領域 R について、x 方向に板を作ってから y 方向に積分するのか、y 方向に板を作ってから x 方向に積分するのか、 2 つのやりかたがあるのがわかります。そして、この領域 R の境界線 C は、閉曲線すなわち陰関数であり、”(陽)関数” とは、x を決めると、y がただ 1 つに定まる関係のことをいうのですから、この陰関数は 2 つの陽関数に分割できることもわかります。そして、その最も簡単な分け方は、A-B で y=f(x) のかたちで分割するのと、C-D で x=g(y) のかたちで分割する、その 2 パターンがあるのもわかります。
 上の式は y で偏微分されているので、まず y から積分するように仕向けるのが簡単です。したがって、y=f(x) の形で表される、A-B 間に存在する 2 つの関数を、

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という風におきます (こちらの編集上の手違いで Y2 と Y1 が逆になってしまい、添え字がややこしくなってしまいましたが、気をつけましょう)。全く触れてきませんでしたが、それぞれの接点の座標は図にすでに書き込んであります。こちらの x, y は見にくいですがスモール x, y です。今関数でおいたのはラージ x, y なので、混同しないでください。要するに、このように置くことで、上の 2 重積分は計算できるわけです。y は Y2 から Y1 まで、x は x1 から x2 までの範囲で 2 重積分すればいいのですね。したがって、

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ということがわかりましたが、ここで考えてほしいのがこれは何を意味しているかということです。実は上の式は、周回線積分となっているのに気づいたでしょうか。マイナスがついててじゃまなのでマイナス 1 で脳内因数分解しておいてください。すると、Y1、つまり図の上の経路に沿って x2 から x1 まで、そしてもう一つの積分は Y2 に沿って、x1 から x2 まで、これは紛れもなく周回線積分を表しています。ただし、どっちが正なのかは [3] でもあいまいなままでしたので、ここで “正の向き” を定義します。正の向きとは、そのコースを歩いていて左側に領域が見える場合、と定義します。つまり、このような簡単な場合においては、右回りのことをいいます。以上から、

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であることがわかりました。
 C-D 間も全く同じです。

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のようにして、x で偏微分されている方にこれを適用すればいいのですね。

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今度は、X1 に沿った正の周回線積分とみる場合、y2 → y1 でなければならないこと、X2 に正の方向で沿う場合は y1 → y2 でなければならないことに注意してください。これで、得られた 2 つの結果を足すと、

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が証明できます。とりあえず、証明を簡単にするため最も簡単な場合について証明を見ましたが、一般に、経路はもっと複雑でも、中に穴が開いていても、境界線が閉じてさえいればグリーンの定理は成立します。また、いうまでもなくこの定理は偏微分が出現していますから、問題にした領域のあらゆるところで C1 級であることが必要です。

単連結領域におけるグリーンの定理

 実は、複雑な領域でも成立することを証明するのは上で行った証明よりもものすごい簡単なので、ついでに示しておきます。次に、中に穴が開いていない領域ならどんな領域でもかまわないことを証明します。そして、そのような場合で最も簡単な境界線

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で考えます (下の D は C の間違いです)。すでに切り込みが入っているのが分かるとおり、切り込みを入れると実は今まで考えていた最も簡単な閉曲線 2 つに分割できてしまうのです。したがって、この 2 つの閉曲線について、

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が成り立ちます。上の図で見たとおり、赤い切り込みの経路が上の周回と下の周回で逆方向になるので、互いに打ち消しあって、結局全体の周回積分と等しくなるのです。一方、最初取った和によると、上の経路の領域においてグリーンの定理が正しく、同じく下の経路の領域においてグリーンの定理が正しいので、その 2 つを合わせた領域すなわち上の図にある全領域においてグリーンの定理が成立します。結局、いくら複雑な閉曲線でも、このような切り込みをいくらでも入れていけばグリーンの定理が適用できてしまうことがわかります。

多重連結領域におけるグリーンの定理 (最も一般的な場合)

 次に、穴が開いたような領域を考えます。いくら曲がっててもよくて、かついくら穴があいていてもよいのですから、これが最も一般的な場合のグリーンの定理となりますね。なお、穴が開いていない領域を単連結領域、穴が開いている領域のことを多重連結領域といいます。

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このように、多重連結領域も切り込みを入れれば単連結領域と同じことになるんですね。先ほど定義した正の向きによれば、内側は時計回りになりますので、注意します。

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結局、最初の式は単連結領域とみて周回積分をしているのだから、上で書いた穴あきドーナツの領域に関して、グリーンの定理が成立しています。結局、穴があいたことによって生じた 2 つの閉曲線について、周回積分すればいいということなのですね。これ以上穴が開いていたとしても、やることは全く同じです。

グリーンの定理と面積

 グリーンの定理を用いた応用例の一つに、面積があります。グリーンの定理を乗せている演習書で、これを扱っていないものはないというほどに出てきます。どのような公式かというと、任意の閉曲線 C が囲む領域の面積 S は、

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で与えられるという公式です。証明は非常に簡単で、グリーンの定理より、M(x,y) = -y、N(x,y) = x なので、

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でおしまいです。

特異点を含む循環

 ここまでベクトルが一切登場しませんでしたが、このグリーンの定理を使うと、実はスカラーポテンシャルを持つベクトル場の循環はいつでも 0 になるわけではないことが明らかになります。その原因は、特異点にあります。特異点とは、分母が 0 になってしまって∞ やらに発散してしまい、具体的な値が出てこないような点を言います。 1/x ならば x=0 が特異点です。
 この話については、次の例が有名ですので、それを解いていくかたちで確認してみましょう。

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 最初の経路について、

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ですが、ここでちょっと見てみてほしいのが、

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という点です。周回積分の左の項を M、右を N とおけば確かにそうなっています。さらに、上に図示した領域に特異点はありませんから、この領域内において C1 であり、したがってグリーンの定理より

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であることがわかります。じつは、このグリーンの定理のかっこの中の ∂N/∂x – ∂M/∂y というのは、ベクトル f=Mi+Nj としたときの回転と一致しています。つまり、∂N/∂x – ∂M/∂y = 0 であるということは、∇× f = 0 であり、上の問いにおける M, N から作ったベクトル Mi+Nj は保存力場であることを示しているのです。だから、上の Mdx + Ndy というのは、f=Mi+Nj と、dr = dxi+dyj+dzk という風に見れば、f・dr すなわちスカラー線積分の形をしているのがわかります。このため、周回積分は 0 になったともいえるわけですね。
 だとすれば、話は簡単なようにみえます。(b) の場合も、同じく 0 になるだろう、というのが予想できます。しかし、こちらの場合は残念ながらそうはなりません。この領域には特異点 (0,0) が含まれているからです。領域内に特異点を含むとは、この領域内において C1 級ではないということであるため、グリーンの定理が使えず、必ずしも ∇× f = 0 だからといって circ f = 0 であることが保証されるわけではないのです。
 したがって、問題の値を求めるために、次のような手法がとられます。まず、特異点を原点として適当な閉曲線を作り、残りの領域はグリーンの定理を適用してさっさと取り除いてしまいます。適当と行っても訳の分からない図形を書いてもしょうがないですからたいてい円ですね。ここでは、半径 r の十分小さな円を特異点のまわりに作ります。

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こうすることで、多重連結領域に関してグリーンの定理が成り立つので、グリーンだけに緑色 (←笑うところ) にしてある部分は C1 であるためこの線積分は 0 になります。すなわち

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であることがわかります。この内側の円、半径 r の円の周回積分さえ求まれば、それにマイナスをつけるだけで求める周回積分が求められるのですね。もちろん円に沿ってとくれば極座標変換しかありません。ただ、方向に注意します。積分範囲は 0 → 2π ではなく、時計回りであるため 0 → -2π です。

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したがって、求めたい周回積分はこれにマイナスをつけたものですから、答えは 2π であることがわかりました。このように、循環は必ずしも 0 になるわけではなく、それが特異点を含んでいない時に限り、0 になるのですね。ちなみに、上と全く同じ手法は複素解析でも出てくるので、慣れていて損はないと思います。なお、物理ではこのような例外はほとんど考慮する必要がありません。基本的に物理学では基準点をそうならないように “遠いどこか” にしておけばいい話であって、観測点 (つまり特異点になるところ) そのものを領域に含まなければならない場合を除いてはこのような例外は考えなくてもいいのです。
 そろそろベクトル解析も終盤に近づいてきましたが、次回はガウスの発散定理について取り上げたいと思います。

「ベクトル解析[5] – 体積分 / 平面のグリーンの定理」への1件のフィードバック

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