微分方程式[1] – 変数分離形 / 1階線形微分方程式

このシリーズでは微分方程式について取り扱います。授業で取り扱うような典型的なタイプの微分方程式が自力で解けるようになることが目的です。教科書のようなものを作るのが目的であればまさに世に出ている教科書や既にある大量のウェブサイトの資料、そもそも学校の授業だけでも十分なわけで、このシリーズでは第一に「式や解説の省略を絶対にしない」ことを心がけています。これが他のサイトや教科書にない特色です。
 第一回目は一階の常微分方程式を解いてみようという回です。しかし一階の微分方程式はちょっと他とは扱いが特殊なので、手っ取り早く統一的な解き方を知りたい人はこの回は冒頭の概観だけ見て、第三回に飛んで下さい。第一回で出てくる一部の特殊な方程式を除いて、線形方程式は全て第三回の一般論を適用し解くことが可能です(しかもそれらは実用上ほとんど出てこず、実際に応用分野で解く方程式はほぼ第三回以降の内容のみで対応可能です)。第二回はコンピュータを使ったお遊びなので飛ばしても問題ありません。

常微分方程式とは?

 微分方程式 (Differential Equations) とは、未知関数の導関数を含む方程式をいいます。その未知関数が、いくつの独立変数に依存するかで、微分方程式はさらに細分されていきます。
 未知関数が独立変数を 1 つしか持たないとき、その微分方程式は常微分方程式 (Ordinary Differential Equations, abbreviated as “O.D.E.”) といいます。未知関数が 2 変数関数あるいはそれ以上であり、その偏微分を含む場合は偏微分方程式 (Partial Differential Equations, abbreviated as “P.D.E.”) といいます。
 1 変数関数の微分から多変数関数の微分に手をつけると、1 変数関数のときにはなかった様々な概念が登場し、非常に大変でした。それと同じく、微分方程式においても、偏微分方程式は非常に難しいので、まず 1 変数関数の微分方程式、常微分方程式から、となります。以下、1 文字節約してもここは紙面じゃないので別にどうでもいいといえばいいのですが、常微分方程式のことを単に微分方程式と呼びます。

微分記号の表記方法

 微分方程式にあらわれる表記法についてですが、導関数は通常 dy/dx あるいは y’ のかたちで記述されます。日本では、y’ のことは y ダッシュと読みますが、英語では y’ のことを y プライム と読みます。ダッシュと読むのは日本だけのようなので、これも和製英語の一種なのでしょう。また、文字の上にドットがつく場合もあります。これも微分を意味しますが、文字の上にドットがつく微分は、時間による微分であることを意味します。ですから、通常 x ドットならば、dx/dt を意味します。
 物理、とくに力学の授業ではドットというのをよく見かけますが、個人的にはドットや ‘ という記号で書くより、dx/dt, dy/dx とした方が本来の意味が明確で好きです。今までの記事もほとんど割り算形式にしてあるのはそのせいです。ただ、今後出てくるベッセル方程式やルジャンドル方程式といった複雑な方程式は逆にそう書くと見づらいので y’ としたものもあります。要するにどの表記方法が登場しても対応できるようにしておくことが重要です。

線形と非線型

 また、微分方程式における分類上非常に重要なのが、線形 (Linear) であるかどうかです。線形であるとは、解 y を定数倍しても微分方程式の形が変化しないようなものをいいます。非常に簡単に言えば、y あるいは y そのものの微分に関して、その 2 乗、3 乗といった項を持たないような方程式です。 y の二乗やルートy’ など、この手のものが含まれればその方程式は線形ではない、つまり非線形であるといいます。
 線形であれば何が有利かというと、解がベクトル空間を作ることにあります。要するに線形代数の理論にのっとって、高い階数においても明快に微分方程式の解法を議論できるのです。このサイトはあまり他の分野と絡める、言い換えれば他の分野を前提とすることを避けているため、可能な限り線形代数とは絡めませんが、一般論は第三回で紹介しています。

一階線形常微分方程式

 最高階数が 1 階までの場合、つまり 1 階線形微分方程式 (First-Order Linear Differential Equations) は、よく解き方が研究されている微分方程式の中でも、特に色々調べられていて、なんと二次方程式のごとく解の公式まで存在します (この記事の終盤参照)。1 回線形微分方程式は、以下のような一般形で表されます。

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 また、1 階の微分方程式の形式ですが、標準形 (Standard Form) あるいは、微分形 (Differential Form) というかたちを取ることができます。標準形とは、

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で表される形をいいます。要するに、dy/dx の項だけ左辺に残して、あとは全部右に追いやってしまう形です。
 一方、微分形とは、

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で表される形をいいます。これは、dy/dx を含む式に、形式的に dx をかけることで上のような形に持っていくことができます。厳密にいえば標準形と微分形は全く等価とはいえませんが、解く上では違いはないため、標準形 ←→ 微分形の変換はこの手順で行えるものと思えばよいでしょう。
 ここで注意しなければならないのは、標準形から微分形にするにはその組み合わせは無限にあるということです。たとえば、標準形においては f(x,y) = x/y ならば、x と 1/y の組に分けて分離する、1 と x/y に分けて分離、 x^2 と 1/xy に分離・・・など、いくらでも組み合わせが存在することになります。
 これ以下では、実際に 1 階微分方程式の分類とその解法を紹介したいと思います。

変数分離形の解法

 変数分離形 (Separable Equations) とは、微分方程式を標準形に直したとき、

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となるような方程式をいいます。分数になっていたり、マイナスがついているなどは微分形に直すと明快になるという便宜上つけたもので、要するに標準形では x の関数と y の関数の積になっていれば変数分離形です。このような形になった方程式は分離可能である (Separable) といいます。
 変数分離形の解法は明快であり、上記を微分形にすると、

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となるので、両辺を積分します。この場合どこからどこまでというのは存在しないので、不定積分記号をかぶせて積分します。片方の積分にある区間をもうけるならばもう片方はそれに対応した区間の積分記号がつくというだけの話です。

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0 というのは定数を微分したものという考え方もできるため、右辺には積分定数 C が出現します。これが微分方程式を解く上でまず気をつけたいところです。ただし、解法上はここを 0 にしたままでも問題ありません。なぜならば、左辺の積分でまた積分定数が出るからです。
 積分定数の扱いについては、一つの積分で定数が出るたび C1+C2 としたりするのは面倒なので、ここでは一貫して C としか書きません。移行しても -C を C とおきなおせば C だし、何を足しても何倍かけてもおなじことなので、改めて定数をおきなおさないで C のまま書くことにします。この C は「何らかの値」を既に指し示しているものではなくて「具体的な状況設定をしないかぎり何の値であってもOK」という意味の記号です。移行したり定数倍しても C のままにできるポイントはここにあります。
 あとは、以上を計算すれば変数分離形は終了です。上の形は別に、Adx=Bdy の形式にしても問題ありません。

同次形

 同次方程式 (Homogeneous Equations) とは、”1 階に限って” は、標準形において、

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となるような方程式をいいます。x, y それぞれに同じ数をかけると、元の形と一緒になるということですね。一般に、関数が n 次の同次形であるとは、

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であることをいいます。同次形であるかどうかの判断方法はこれを利用すれば容易です。標準形において分母を f(x,y)、分子を g(x,y) をおき、上下が同じ次数の同次形となれば上の式でいう k の n 乗が相殺されるため、同次形であるということができます。
 1 階の同次方程式の解法の特徴は、変数分離形に帰着できることにあります。任意の k に対して

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が成り立つのがそもそも同次形の定義なのですから、その任意の組み合わせのうち、k=1/x を選ぶと、

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ということができます。つまり、k が任意であることを逆手にとって y/x の 1 変数関数に直してやりました。したがってここで

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というような置換を行うことで、同次形は変数分離形になります。証明は以下のようです。
 y と u はそれぞれ x の関数です。y は当たり前ですが・・・、u は、x の関数 y を x で割ったからですね。結局これも x の関数というわけです。したがって、y=xu とおくことで、この両辺を x で微分すれば、積の微分公式より

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なので、これを同次方程式の左辺に代入すると、

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は u のみの式 / x のみの式 という形をしているので明らかに変数分離形です。したがって 1 階の同次形は、上のような置換を行うことで変数分離形の解法で解くことができます。ただし、最後に u を y/x に直すのを忘れずに

完全微分方程式の解法

 微分形、すなわち

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において、次の条件を満たす微分方程式を完全微分方程式 (Exact Equations) といいます。

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また、これを満たす場合、方程式は完全である (Exact) といいます。
 完全である方程式は何が便利かというと、

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と表記することができます (理由は後述)。これは、全微分のかたちをしているのがわかります。全微分 dΦ=0 ということですね。したがって一般解は dΦ=0 の両辺を積分することにより

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という風に求まります。では Φ(x,y) はどのようにして求めるか、ということですが、完全である場合

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です。したがって、N, M をそれぞれ偏微分に対して偏積分とでもいうのでしょうか、そうすることで、

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となるので (すでに積分定数ならぬ積分関数は f, g と出してあります)、二つの式の共通部分を Φ(x,y) と決定すれば一般解を得られます。上を見るとわかるように、偏微分すると定数だけじゃなくその偏微分した独立変数以外のみの関数も消滅するので、それを出してやらないといけないのが注意点ですね。
 さて、完全なら解けることが分かりましたが、そもそもなぜ完全であるための条件が

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であるのかが不明瞭です。この条件、一見すると一体どこから出てきたのか不思議ではありますが、ベクトル解析のことを思い出しましょう。よくみると左辺は

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であることがわかります。いま、完全であるならば、

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だったので、

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であるということができます。すなわち M と N からなるベクトル場 f は保存力場であり、解 Φ=C における Φ はスカラーポテンシャルです。それが完全の定義なのですから、当然こうなると、f が保存力場であるための条件は、

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ですから、これが Mdx+Ndy=0 が完全微分方程式であるための条件となります。具体的に計算すると、

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なので、これで

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を満たせば完全微分方程式となることが示されました。

積分因子とは

 一般に、微分方程式は完全ではありません。上の条件を満たさないものも多数あります。こういう場合、上の解法でさっさと、というわけにはいきません。しかし、ある関数を両辺にかけると、完全になる場合があります。このような関数 I(x,y) のことを、積分因子 (Integrating Factors) といいます。積分因子を求めることは実は全く容易ではないのですが、一部の限られた場合に関しては自力で発見することができます。
 具体的に見つけるのは困難でも、積分因子であるための条件を導き出すのは比較的簡単です。いま、I(x,y) をかけることで完全になったとすると、

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は完全微分方程式なので、

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が成立します。上記は、積の微分公式が適用できます。そうすれば、IM, IN は分離できて、I が満たすべき条件を出すことができます。

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なので、これをどっちかに移行すれば、

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の解が積分因子であることが分かりました。しかし、これでお手上げです。微分方程式は微分方程式でも偏微分方程式ですから、どうしようもありません。でも、先に述べたように、ここで I(x,y) などに縛りを加えてやると、解が求められます。
 たとえば、積分因子が x だけの関数であったと仮定します。すると、I(x, y) → I(x) ですから、1 変数関数になり、偏微分は常微分となります。さらに、y は独立変数でなくなったので項が 1 つ消滅し、

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を求めればよくなります。I について解くので、そう考えると上の式は、偏微分方程式から常微分方程式になった点に注目してください。ここで、標準形になおすと、

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が得られますが、しかしここでやはり手詰まりになります。右のごちゃごちゃした項が x のみの関数でなければ変数分離形ではないからです。というわけで、非常に都合のいい条件設定ですが、これが x のみの関数となったとします。すごい狭い条件ですけど、もしそうなったら変数分離形として積分因数が求まります。このとき、変数分離形を解けば、

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という積分因数が得られます。都合がよすぎな感じですが、この後紹介する 1 階線形微分方程式でまさにこのパターンが当てはまるので、この理屈は一応押さえておく必要があります。積分因数を発見するのは不可能に近いが、なんかすごい都合の良い条件を設定するとその条件を満たす微分方程式に限り積分因子を自力で発見できる、ということですね。このほか、y のみの場合は同じやり方ですぐ作り出せます。その他良くあるパターンとしては、(y/x) の関数、(xy) の関数といったパターンもありますが、これらは正直覚えるものじゃないと思うので (導出過程も複雑過ぎる上に結果も覚えやすいものではない)、いらないと思います。

解の公式

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 であるような方程式を、1 階線形微分方程式 (Linear First-Order Differential Equations) といいます。Q(x)=0 であればこれは変数分離形である点にも注意しましょう。実は 1 階の場合は、線形微分方程式には解の公式が存在します。

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しかしこのような奇妙な形を鵜呑みにすることも難しいので、どのようにしてこれが出てきたかを探ってみることにします。
 まず、方程式を微分形に直します。

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これは、一般には完全ではありません。条件を当てはめてみればすぐ分かります。そこで、積分因子 I(x,y) により完全になったとすると、

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ここで M=P(x)y-Q(x), N=1 ですね。いま、I が x のみの関数であるためには、

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ということでしたが、実際に計算してみると、

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と、見事に x のみの関数となりました。したがって、積分因子は x のみの関数であり、

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であることが分かります。ここで補足ですが、e の右肩に乗っかっているのは不定積分であるにもかかわらず、不正積分後に積分定数を出す必要はありません。なぜならば、積分定数を出すと、+C の部分だけ切り離して、結局、定数かける e の累乗というふうになりますが、積分定数によって出現したこの定数部分はあくまで定数ですからあってもなくても結果的には完全性には影響しません。したがって、解の公式を適用するときは、この P(x) の積分に対しては通常積分定数を出しません。出しても出さなくても同じなら面倒だから出さなくていいやってことですね。
 これで方程式は完全となりました。微分形でなく元の形に積分因子を作用させてみると、

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となります。なぜ元の形で考えたかというと、これも非常にうまくできてると思うのですが、左辺は積の微分になっています。

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見方を変えれば、積分因子を見つけてかけることは、積の微分公式を適用できるようにすることだともいえるのですが、ここで両辺を積分すれば、

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となります。私も最近まで誤解していたのですが、Wikipedia によると、このようにあらかじめ任意定数を出してもよい (後で積分の任意定数を別に出しても統合すれば同じこと) ので、したがって、両辺を割れば

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が出てきます。一階の線形微分方程式は、この公式を適用すれば一発で終わります。物理や工学分野でこの手の方程式は沢山見ることになるので、是非とも覚えて下さい。中学で習う解の公式が二次方程式のものなら、大学で習う解の公式はこの一階線形微分方程式のものです。

ベルヌーイの方程式

 微分方程式のなかには、線形でないにもかかわらず置き換えによって線形に直せるものも存在します。

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このような形をしているものを、ベルヌーイの方程式 (Bernoulli Equations) といいます。これは、明らかに非線形ですが、

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という置き換えによって線形になります。
 念のため、この置き換えで線形になることを示しておくと、まず、上の両辺を微分することで

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となりますが、最初の方程式に (1-n)y^-n をかけると、

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となるので、一番左の項がそのまま dz/dx におきかわり、

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は線形です。1 階の微分方程式の解法は、主要なものは以上のようです。種類は多そうに見えますが、同次形やベルヌーイの方程式といったものはただの置換で済むだけの問題なので、全く別のものとして扱う必要もなく、実際相手にしなければならないものはそんなに多くないと思います。

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